胎児疾患

胎児外来

胎児外来では超音波検査などで、胎児成長の問題(子宮内胎児発育不全)や、胎児の病気が疑われる妊婦さんを対象としています。

診察日 月曜日・火曜日・木曜日

胎児不整脈について

心臓は胎児の身体中に血液を送り出すポンプの役割をしている重要な臓器です。通常規則正しいリズムで脈打つことで、心臓は効率よく血液を送り出しています。しかし、脈が正常の範囲をはずれたりリズムが狂ったりすることがあり、これを不整脈と言います。不整脈によって心臓がうまく血液を送り出せなくなると、胸やお腹のスペースに水が貯まったり(胸水・腹水)、皮膚がむくんできてしまう(皮下浮腫)ことがあります。さらに状態が悪化すると複数の箇所に水が貯まり、胎児水腫という状態になることがあります。

不整脈には、脈が速くなるもの(頻脈性不整脈)と遅くなるもの(徐脈性不整脈)があります。

頻脈性不整脈に対して当科では、全国の周産期医療センターが共同で行っている「胎児不整脈に対する経胎盤的抗不整脈薬投与に関する臨床試験」に参加し、胎児頻脈性不整脈に対する胎児治療を行っています。これは母体を通して胎児に脈を遅くする薬(抗不整脈薬)を投与し、心臓のポンプ機能を改善させることを期待した治療法です。

徐脈性不整脈も、母体を通しての薬剤投与(脈を速くする薬剤、副腎皮質ステロイド)を必要に応じて行っています。

先天性心疾患について

先天性の心臓病は約100人に1人の胎児が持っている、最も頻度が高い胎児の疾患です。心臓の構造は複雑でさまざまな種類の疾患がありますが、中には生まれた直後から治療が必要な心疾患もあります。お腹の中にいるときから診断が付いていることは、出生後にすぐ治療を開始できる利点があり、またお母さんやお父さんが病気に対する知識や心構えを持って胎児を迎えることができます。

当院では産科医師または超音波技師が胎児超音波を行い、心臓疾患が疑われた場合には産科医師と小児循環器科医による精密超音波を行ないます。心疾患の診断がついた場合、分娩の方法や生後の治療の仕方などをについて検討し、よりよい治療のスタートラインに立てるように管理していきます。

先天性横隔膜ヘルニアについて

先天性横隔膜ヘルニアとは…
先天性横隔膜ヘルニアとは、生まれつき横隔膜に欠損孔があり、その孔を通じてお腹の臓器が胸のなかに入り込んでしまう病気です。左側に欠損孔ができることが多いですが、まれに右側や両側に欠損孔ができることもあります。お腹の臓器(胃、肝臓、腸管、脾臓など)によって胸の臓器(肺や心臓)が圧迫されるため、まだ発達・形成途中の肺や心臓の低形成が問題となります。
出生前の重症度評価
先天性横隔膜ヘルニアの重症度は胎児の肺がどの程度発達しているかによって決まります。その評価は超音波検査や胎児MRI検査を用いて行います。 当院で用いている指標は以下です。
  • 肺胸郭断面積比(LT比):健側肺断面積/胸腔断面積
  • 肺断面積児頭周囲長比(LHR):肺長径×肺短径/児頭周囲長

また最近では、肝臓が胸のなかに入り込んでいるかどうかと胸の中に入り込んだ胃の位置の組み合わせによる重症度分類も用いています。

出生後の管理
出生前から小児外科、新生児科、小児循環器科、麻酔科との連携のもと分娩に臨みます。
出生後早期に手術を行うことが多いですが、児の呼吸や循環動態をみながら手術の時期を決定します。
当院での過去8年間の成績
肺胸郭断面積比(LT比)(0.08の場合は、手術を行うことのできない症例が増え、短期予後良好(生後90日の生存)例は67%ですが、肺胸郭断面積比(LT比)≧0.08の場合には95%以上が短期予後良好という成績が得られています。

先天性肺嚢胞性腺腫様形成異常(CCAM)について

CCAMとは…
先天性の肺の形成異常で、正常の肺胞組織が一部欠如し、多数のふくろ(嚢胞)からなる腫瘤を形成する肺の病気です。超音波検査の普及によって出生前診断が増えています。胎児期に自然に小さくなることも多いですが、なかには病変が大きくなったり、胎児水腫(胎児のむくみ)を合併することもあります。その場合、胎内で状態が悪くなったり、出生後に慎重な呼吸管理が必要になることもあります。
当院での管理方法と胎児治療
妊娠34週未満で胎児水腫または腔水症(腹水や胸水)を呈している症例もしくは病変が一定の大きさ以上の症例に対して胎児治療を行っています。CCAMは嚢胞の大きさによってmacrocystic type(大きな嚢胞)とmicrocystic type(小さな嚢胞の集合)に分類され、macrocystic typeには嚢胞羊水腔シャント術を、microcystic typeには母体ステロイド投与を行っています。嚢胞羊水腔シャント術は「シャント術」の項を参照ください。
当院での成績
当院では2010年からCCAMに対する胎児治療を行っています。胎児治療を行った全例が胎内で病変が縮小し、出生後に小児外科による病変の切除術を行い無事に退院しています。また、胎児治療の条件を満たさずに胎内で自然に経過をみていたCCAM症例の多くは病変が小さくなり、大きさが変わらない症例でも無事に出生し、元気に退院しています。

胎児中枢疾患について

胎児水頭症
水頭症とは、頭のなかに髄液がたまって脳室が拡大し脳を圧迫した状態。その原因によって、重篤なものから比較的程度の軽いもの、正常発達を遂げるものまであります。原因や病態によっては、出生直後から厳重な管理や手術が必要な症例もあるため、出生前から脳神経外科、新生児科と協力して分娩に臨みます。
以下に代表的な水頭症の原因を示します。
脊髄髄膜瘤(キアリ2型奇形)
脊髄がうまく形成されないために髄膜瘤が背中や腰、お尻にみられる神経の病気です。これに水頭症や小脳や脳幹が下垂するキアリ病を伴うことがあります。瘤のできる位置によって出生後の神経症状に差がありますが、下肢の麻痺や膀胱、直腸の障害などを伴うことがあります。脊髄が露出し髄液が漏れている瘤の部分を本来の硬膜の内に戻して筋肉や皮膚で覆う手術が必要になります。水頭症に対する治療は、脳室内の過剰な髄液を腹腔内に流す目的で脳室-腹腔シャントを挿入します。
Dandy-Walker 症候群(ダンディーウォーカー症候群)
小脳虫部の低形成、もしくは形成不全を特徴とする疾患で、一部に水頭症を合併します。
出生後の経過は合併疾患がなければ比較的高率に正常発達が期待されます。
全前脳胞症
前脳の欠失や不完全な左右の分離によって生じる脳と顔面の疾患です。40~45%に染色体異常を合併するとされ、その中でも13トリソミーが最も多いです。
左右の脳の不分離の程度や合併症の程度によって出生後の経過は異なり、出生直後より重篤な症状を呈するものから長期生存するものまでさまざまです。
遺伝子異常や染色体異常に伴う水頭症
男児のみに発症するX連鎖性遺伝性水頭症や常染色体遺伝を示すいくつかの症候群が存在します。出生後の経過は各々で異なります。

胎児水腫について

胎児水腫とは胎児の皮膚やお腹・胸などに水がたまったいわゆる「全身がむくんだ」状態です。心臓の機能が低下して身体中に血液を循環することができなくなって起こります。発症原因はさまざまで、主なものは心臓の病気(構造異常や不整脈)、胸郭内腫瘤、ウイルス感染、染色体異常、リンパ液の還流異常、貧血などが挙げられますが、原因が不明なことも多いです。

一旦胎児水腫の状態になると、出生後の経過は一般的に良好とは言えません。しかし、一部の胎児はお腹のなかにいる時に治療する事で助けることができます。
具体的には胸腔内に溜まった胸水を、針を刺して抜く(穿刺といいます)、穿刺しても再度溜まってくるようなら胎児の胸腔と羊水腔にシャントチューブと言う管を留置する治療(胸腔?羊水腔シャント術)を行ないます。(胎児シャントについて)貧血が原因の胎児水腫に対しては母体の子宮に直接針を刺して、へその緒から胎児への輸血を行う事があります。(臍帯穿刺・胎児輸血について)胎児の不整脈が原因の胎児水腫の場合は、母体に抗不整脈薬を投与し、胎盤を介して胎児の治療を行う試みが始まっています。

胎児消化器系疾患・腹部疾患について

胎児期に発見される腹部の代表的な疾患としては、消化管疾患と、腹壁の異常があります。
消化管疾患としては消化管閉鎖?狭窄が多く、ついで消化管破裂、胎便性腹膜炎、腸回転異常などが挙げられます。消化管閉鎖?狭窄は、食道から肛門までのどの部位にも起こりえます。これらの疾患では生後に手術治療が必要です。胎内では、消化管の閉鎖?狭窄のため飲み込んだ羊水が通過できず、閉鎖部位より上の消化管が拡張したり、羊水過多の状態となります。そうなるとエコーで発見されることがありますが、軽症例では、出生後に初めて診断されることもあります。
腹壁の異常としては、臍帯ヘルニアと腹壁破裂が代表的です。これらの疾患では内蔵を覆う腹壁が欠損していることが共通しており、出生後には手術が必要です。臍帯ヘルニアは、臍帯の付着部位で腹壁が欠損し、内臓が臍帯に入り込んだ状態です。他の臓器の異常や染色体異常を合併する頻度が高く、それらの検査をすることが望まれます。腹壁破裂は、腹壁が全層欠損し、そこから羊水腔内に内臓が浮遊する状態です。他の臓器の異常を合併することは比較的少ないです。
これらの疾患については、小児外科や新生児科との密な連携で出生後の管理にあたります。

胎児泌尿器科疾患について

代表的疾患には、閉塞性尿路疾患(通過障害により尿が尿路に溜まった状態で、水腎症?水尿管症?巨大膀胱として認められる)、嚢胞性腎疾患、腎無形成(腎臓が形成されない)があります。
羊水は胎児の尿を主体としており、その量は腎機能の指標となります。また、羊水は胎児の肺の形成において重要な役割を持ちます。
これらの疾患に対しては、泌尿器科や腎臓内科、新生児科と連携して診療にあたります。とくに妊娠早期に発見された後部尿道弁などの尿路閉塞性疾患に対しては、胎児治療として膀胱―羊水腔シャント(胎児シャントについて)を行うことで、尿を羊水腔に排出させ、羊水量を維持できる可能性があります。